読書感想:Talking to Strangers トーキング・トゥ・ストレンジャーズ
見知らぬ他人が予想外の感情的反応をみせることにたいして、
私たちはひどく不寛容になる。
1万時間の法則で有名な、マルコム・グラッドウェルの新作。
400ページ以上とかなり分厚く、腰を据えて読んだ。
一言で言い表すのが難しい内容で、あとがきによると、
「見ず知らずの相手とのコミュニケーションを取ることのむずかしさ」
とある。
本の構成が推理小説の様に、最初に「?」が提示されて、
一章ごとに、少しずつ伏線が回収されていく。
良くシナリオの練られた海外ドラマを見ている様。
箇条書きで概要を並べると、
- キューバのスパイに入り込まれたアメリカ諜報機関中枢
- 疑い続けるコスト
- 性犯罪被害者の証言のあやふやさ
- 文化で異なる表情の意味
- アルコール文化の問題点
- 拷問と記憶の改変、改竄、破壊
- 自殺の難易度と企画数
- 犯罪スポット強制捜査の成功とその後
以下ネタバレ
本作の中心部分は、犯罪スポットでの強権的な捜査の成功体験を、
「特定犯罪スポット」の部分を省いて、全米で展開してしまった為に
巻き起こっている、警察と一般市民との摩擦。
これが最後の部分に提示される為、この本はなんのことについての本なのだろう
という「?」が読んでいる間、ずっと続いた。
それがエンターテイメント性を上げる事に繋がって、400ページもある
内容を飽きさせず、読ませる事に成功している様にも思う。
本文中に出てくる「アマンダ・ノックス」はNetflixで映画になっている。
ジミー・大西みたいな、(日本人ならみんな)知ってる人からみたら面白い人でも、
間違って文化圏が全く違う海外で、殺人事件やテロなんかに巻き込まれたら、
誤解されるだろうなっていう。
警察・検察・裁判官などの、人を判断する職種の人は、特に読むべき本かと。
凄く勉強になったが、読んでるだけでも大変だと感じる本を書き上げるには、
大変根気の必要な作業だったと思う。
昨今のBLM運動にも通底するであろう、今作のテーマに対する、
作者の思いの強さを感じる。